トップページ | 第2回 事実が違えば結論も違う »

第1回 納税者が制度を動かす?

平成20年8月、経済産業省は、平成21年度の税制改正において、
海外子会社からの配当を益金不算入とする制度の導入を検討していることを公表しました。
(http://www.meti.go.jp/press/20080822002/20080822002.pdf)


では、このような提案がなされた背景は何でしょう。


経産省は、提案理由の中で、
・我が国企業の海外生産比率が約3割強に上昇し、海外利益が大幅に増加
・それに伴い、海外利益の多くは国内に戻らずに海外に留保されている
という統計を出しています。

そのため、海外子会社からの配当を益金不算入にして、
国内にキャッシュを還流させることが、この制度導入の目的のようです。


では、この制度を導入することで本当にその目的は達成できるでしょうか。


会社法上、配当は必ず行わなければならないものではありません。

親会社が資金を必要としない場合には、海外子会社からの配当がなくても、
株主である親会社から批判が出るということもないでしょう。

ですから、海外で得た利益は、海外子会社に留保したままでもいいはずです。

しかし、親会社において、本当は日本にキャッシュを戻したいのに戻せない最大の理由に、
国際的に見て高い我が国の税率があることは間違いありません。

そうであれば、この制度を導入することにより、
海外子会社から我が国へのキャッシュの還流が期待できそうです。


ただ、こうした制度を導入しようとするもう一つの背景には、
  「納税者のまっとうな主張の増加」
があると、私は考えます。

海外子会社に利益を留保する、ということは、企業にとって、
当然の合理的な経営判断である場合が少なくありません。

法律の範囲内で適正なタックスプランニングを行うことは、
現代の営利企業にとっては義務とすら言ってもいいものです。

不要な税金を支払うことは、株主に対しても説明がつきません。

ところが、国税庁は、企業が海外に利益を留保することを、
  「国際的租税回避」
とみる傾向が非常に強いのです。

我が国の租税回避防止規定として思いつくのは、
タックスヘイブン対策税制や移転価格税制などですが、
これらを根拠とする更正処分が、近年、非常に増えています。

適正なタックスプランニングをした納税者は、これには黙ってはいられません。

企業の合理的な経営判断を阻害するような更正処分に対して、
訴訟まで視野に入れた主張をするようになってきています。


こうした納税者の行動は、我が国の税制が現代の企業活動に合わなくなってきたことの現われです。

今回の経産省の提言には、こうしたことも背景にあるのではないでしょうか。

|

トップページ | 第2回 事実が違えば結論も違う »