第5回 弔慰金と退職金-税はどうなる?


3月18日の朝日新聞の朝刊に、このような記事がありました。

「創業者の遺族に14億円の弔慰金」


これは、三井ハイテック(北九州市)が、昨年7月に死去した創業者のご遺族に、

弔慰金14億円を支払うことを明らかにしたという記事です。


『退職金』ではなく『弔慰金』なのは、在職中に亡くなられたためとのことです。

ニュースとしてまず目を引くのは、その金額でしょう。

これは、松下電器産業(現パナソニック)の松下幸之助氏の弔慰金約11億円

を上回ることになるそうです。


金額の話はこのあたりにして、このブログでは、

『弔慰金』というものの税務上の取り扱い

について考えてみることにします。


退職金ではなく弔慰金の場合、遺族や会社はどういう課税をされるのか?

次回はこの点についてお話ししようと思います。

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第4回 証明するのは誰?その2

前回から少し時間が空いてしまいましたが、

「立証責任」の話を続けましょう。


「立証責任」とは「証明責任」とも言われます。

分かりやすいように、次の事例で説明します。

例えば、お金を貸したのに返してくれないので、貸主が借主を訴えたとします。

貸主は、自分の主張を裁判所に認めてもらうためには、

・お金を貸したこと

・返す約束をして、弁済日を決めたこと

・弁済日がもう来ていること

の証明をしなければなりません。

なぜなら、これらの事実については貸主が証明責任を負っているからです。

このように、当事者の一方が負う証明の責任が「立証責任」となります。

では、税務訴訟ではどうなるでしょうか。


例えば、更正処分など課税庁によってなされた処分の取消を求める税務訴訟は、

納税者が、課税庁の処分に不満を持っている場合に行われます。

つまり、納税者が、課税庁の処分の根拠に納得できていないから、訴訟になるのです。

一方、処分をした課税庁は、処分を行うだけの法的根拠をもっているはずで、

処分をした根拠について、説明ができるはずです。

したがって、納税者が納得できない課税の根拠についての立証責任は、

その処分を行った課税庁が負うのが、原則です。


ただし、実際の税務訴訟においては、これを原則としつつも、

納税者も自分の言い分がありますから、自分に有利な証拠を出して、

自分の言い分を裏付けられるよう、できる限りの立証をしていきます。

したがって、納税者にとっても、立証というのは非常に重要です。


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第3回 証明するのは誰?


今回も、税務訴訟を取り上げたいと思います。

今回の事案は、移転価格税制に関するものです。


この事案は、地裁では納税者が敗訴しました(東京地裁平成19年12月7日判決)。

ところが、高裁では納税者が逆転勝訴しました(東京高裁平成20年10月30日判決)。

そして、そのまま、納税者勝訴で確定しました。

通常の民事訴訟でも、地裁で敗訴した当事者が、

高裁で逆転勝訴するということは、とても大変なことです。

これが、税務訴訟、しかも、

これまでわが国では納税者勝訴のない移転価格税制の訴訟で、

納税者が高裁で逆転勝訴したというのですから、

着目される事案であることは間違いありません。

移転価格税制とは、簡単に言えば、

親子会社などの関連企業の間では、第三者間での取引で設定される

通常の価格とは異なる価格により取引が行われることがあり、

そのような関連企業における取引については、

第三者間での通常の価格で取引が行われたとみなして課税する、というものです。

ここで問題なのは、何が通常の価格なのか、ということです。


その算定の方法は、租税特別措置法に規定があるのですが、

そこで定められている方法のうち、どの方法で算定すべきなのかが争いとなります。


それでは、どの方法によって算定すべき、ということは、

誰が裁判所に対して証明するのでしょうか。

課税処分を行った課税庁でしょうか。

それとも、訴訟を提起した納税者でしょうか。


これが、「立証責任」の問題です。 

次回に、もう少しこの話を続けようと思います。

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第2回 事実が違えば結論も違う

このブログもようやく第2回となりました。

今回は、ある判決を取り上げたいと思います。

平成20年9月12日、最高裁で、ペットに関する税務訴訟の判決が出されました。
(平成18年(行ヒ)第177号)

ペットといっても、私たちに身近な飼い主側の判決ではありません。

ペット葬祭業を営む法人(宗教法人)を当事者とする判決です。

(なお、この最高裁判決の原審であります名古屋高裁判決は、当ホームページ「租税判例研究報告 第28回」に掲載しています。)

事案の詳しいご説明は省きますが、ごくごく簡単に以下に争点を説明します。

公益法人である宗教法人に対しては、基本的に課税は行われません。

ただし、一定の事業からの利益には課税されることとされています。

そして、ある事業が課税の対象となる「収益事業」(法人税法2条13号)にあたる場合、その利益は課税されます。

本件事案は、ペット葬祭業が、この「収益事業」にあたるかどうかが争われました。

最高裁は、判決において、以下のように法律を解釈し、この宗教法人の行うペット葬祭業は「収益事業」に当たると判断して、宗教法人の請求を退けました。

【事業に伴う財貨の移転が役務等の対価の支払として行われる性質のものか、それとも役務等の対価でなく喜捨等の性格を有するものか、また、当該事業が宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か等の観点を踏まえた上で、当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である。】

判決文は難しいですね。

要は、「事案ごとに社会通念に照らして判断します」ということです。

これは『法律の解釈』の部分です。

そして、最高裁は、

 ・本件ペット葬祭業の料金体系

 ・同様のペット葬祭業を営む民間業者との比較

などの項目を取り上げて、それらを社会通念に照らして判断し、「収益事業」に当たるとしました。

これは『事実のあてはめ』の部分です。

判決文は、このように、『法律の解釈』とそれに『事実のあてはめ』を行って結論を出す、という構成になっていることが一般的です。

裁判では、先に出された判決で示された法律の解釈を尊重します。

ですから、『法律の解釈』がころころ変わるということは通常ありません。

しかし、『事実のあてはめ』は、当然のことですが、事案の事実が異なれば、結論も異なります。

もし、自分がペット葬祭業を行っていたとしても、その利益が課税されるのかというと、必ずしもいつもそうではありません。

ペット葬祭業の料金体系や、民間業者との比較などの項目を取り上げ、それらを検討した結果、別の事案では反対の結論が出る可能性もあるのです。

事実は、事案ごとに千差万別です。

ですから、同種の事案で自分に不利な結論の判決が出ていたとしても、それで敗訴と決まるわけではありません。

その事案における「事実」を裁判所にきちんと伝えることができるかどうか。

それが勝負の分かれ目ともいえるのです。

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第1回 納税者が制度を動かす?

平成20年8月、経済産業省は、平成21年度の税制改正において、
海外子会社からの配当を益金不算入とする制度の導入を検討していることを公表しました。
(http://www.meti.go.jp/press/20080822002/20080822002.pdf)


では、このような提案がなされた背景は何でしょう。


経産省は、提案理由の中で、
・我が国企業の海外生産比率が約3割強に上昇し、海外利益が大幅に増加
・それに伴い、海外利益の多くは国内に戻らずに海外に留保されている
という統計を出しています。

そのため、海外子会社からの配当を益金不算入にして、
国内にキャッシュを還流させることが、この制度導入の目的のようです。


では、この制度を導入することで本当にその目的は達成できるでしょうか。


会社法上、配当は必ず行わなければならないものではありません。

親会社が資金を必要としない場合には、海外子会社からの配当がなくても、
株主である親会社から批判が出るということもないでしょう。

ですから、海外で得た利益は、海外子会社に留保したままでもいいはずです。

しかし、親会社において、本当は日本にキャッシュを戻したいのに戻せない最大の理由に、
国際的に見て高い我が国の税率があることは間違いありません。

そうであれば、この制度を導入することにより、
海外子会社から我が国へのキャッシュの還流が期待できそうです。


ただ、こうした制度を導入しようとするもう一つの背景には、
  「納税者のまっとうな主張の増加」
があると、私は考えます。

海外子会社に利益を留保する、ということは、企業にとって、
当然の合理的な経営判断である場合が少なくありません。

法律の範囲内で適正なタックスプランニングを行うことは、
現代の営利企業にとっては義務とすら言ってもいいものです。

不要な税金を支払うことは、株主に対しても説明がつきません。

ところが、国税庁は、企業が海外に利益を留保することを、
  「国際的租税回避」
とみる傾向が非常に強いのです。

我が国の租税回避防止規定として思いつくのは、
タックスヘイブン対策税制や移転価格税制などですが、
これらを根拠とする更正処分が、近年、非常に増えています。

適正なタックスプランニングをした納税者は、これには黙ってはいられません。

企業の合理的な経営判断を阻害するような更正処分に対して、
訴訟まで視野に入れた主張をするようになってきています。


こうした納税者の行動は、我が国の税制が現代の企業活動に合わなくなってきたことの現われです。

今回の経産省の提言には、こうしたことも背景にあるのではないでしょうか。

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